- 著者
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山田 研治
- 出版者
- 九州歯科学会
- 雑誌
- 九州齒科學會雜誌 : Kyushu-Shika-Gakkai-zasshi (ISSN:03686833)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.1, pp.91-105, 1988-02-25
トノサマガエル(Rana nigromaculata)の右側舌尖部を分岐部より切断した後, 3か月から約1年間飼育した.夏期は3か月, 冬眠期間を含む場合は約1年間経過後, 切断側舌尖部に再生が認められたので, 左側の舌尖部を対照側として, 実体顕微鏡および走査型電子顕微鏡によって形態学的に, また, 再生部の感覚については生理学的に検討した.走査電顕写真をもとに, 再生部の面積, 茸状乳頭数, 単位面積当たりの茸状乳頭数を調べ対照側と比較した.再生部と対照側の感覚は再生部と対照側の舌尖部を支配する舌咽神経を残し, 他の舌体部の感覚神経を全て切断した標本を作成し, 再生側と対照側の舌尖部に触刺激と化学的刺激を加え, 舌咽神経の応答を比較した.その結果を要約すると以下のようである.1. 夏期3か月, 冬眠期を含む11か月, 12か月および13か月の各群は, いずれにも舌尖部の再生が認められた.20実験例の再生部の面積の平均値は0.9mm^2で, 対照側の舌尖部の大きさの約1/3であった.2. 再生部にも茸状乳頭が認められた.再生部の茸状乳頭数は20例の平均で25個, 対照側は39個であった.3. 20例の再生部および対照側の1mm^2当たりの茸状乳頭数は, それぞれ28.2個と15.5個で, 再生部では, 特に切断部付近に茸状乳頭が密集していた.4. 再生部と対照側の茸状乳頭の平均直径は, それぞれ9.5μmと12.2μmで, 再生部の乳頭は小さかった.また, その形が円形でないものが認められた.5. 各実験例はいずれも触刺激によく応答した.その結果は対照側と同様であった.6. 再生側は化学的刺激によく応答した.再生側の化学的刺激に対する応答は対照側舌尖部の場合と全く同じ傾向であった.7. 水刺激の場合, 刺激液の流出と同時に応答し, 刺激を止めた後にもわずかにインパルスが発生し, 消失した.0.5M NaClの場合も水と同様に刺激の開始と共にインパルスが発生し, 刺激を中止した後にも, かなり長くインパルスが発生した.また, インパルスの頻度はもっとも大であった.0.01M HClの場合, 刺激開始直後, 短期間インパルスが群発したが, 刺激中にも消失した.0.5M sucroseはインパルスが発生しない例や, 発生してもごく少数であった.0.01M quinine-HClの場合には, 頻度の低いインパルスが発生した.この場合にも刺激を中止した後にも少数のインパルスが持続した.